がんで亡くなる人が多い日本

いまや、日本人の二人に一人はがんにかかる時代です。

では、その罹患や死亡の実態に「地域差」があることは、どこまで知られているでしょうか。

国立がん研究センターでは、都道府県が実施する「地域がん登録」のデータをもとに、部位ごとの罹患率や死亡率を公表しています。

二〇一六年に公表したデータでは、初めて四七都道府県のデータが出揃い、これにより様々な比較が可能になりました。

この調査が画期的なのは、都道府県によって罹患しやすいがんが異なること、また、罹患後の死亡率にも罹患のしやすさとは異なる地域差があることを明らかにした点です。

詳しくは別ページに譲りますが、たとえば、東北地方の日本海側では胃がんの罹患リスクが高く、西日本では広く肝がんが見られます。

より細かく見ていけば、東京都は乳がんのリスクが突出して高く、北海道では肺がんが多いといったことも言えます。

なぜ、こうした地域差が生じるのでしょうか。

あるいは、青森県や大阪府では、がんにかかつた後に治療の甲斐なく死亡してしまうリスクが、他県よりも高いことが明らかになりました。

なぜでしょうか。長野県のように、がんの死亡率を低く抑えることができている県とは、いつたい何が違うのでしょうか。

目的は、がんの「かかりやすさ」や「亡くなりやすさ」を都道府県ごとに概観することで、国、行政、私たち一人ひとりにとつての課題を浮き彫りにすることです。

もしかしたら『がんで死ぬ県、死なない県』という書名に、眉をひそめた方がいらつしゃるかもしれません。

また、先ほどから何度か使っている「亡くなりやすさ」という言葉は、頻繁に登場しますが、あくまでも死亡率の多寡に基づいた表現であり、語義以上の意味はありません。

ましてや、その背景にある人の命を数値として軽く捉えているとか、死亡率や罹患率が高い都道府県を批判しようなどという意図が毛頭ないことは、あらかじめ強調しておきたいと思います。

統計から明らかとなった「格差」を認識し、それを克服すべき課題として位置づけなおすのは行政の役割です。

しかし、行政が打ち出した対策に関心をもって積極的に協力していくのは、私たち一人ひとりの務めだと思います。

都道府県別にがんを論じようという本は、おそらく本邦初と思われます。

新たな知見をもたらし、読者のがんに対する意識を高めるとともに、差し迫る少子高齢化社会において、がん医療の危機を軟着陸させることに資すれば、これに勝る喜びはありません。

参考:がんについて